

松下奈緒 Nao Matsushita 1985年生まれ。兵庫県川西市出身。3歳からクラシックピアノをはじめ音大進学を経て女優に。現在はピアニスト、歌手と幅広く活動。
今、沖縄と東京を行き来する暮らしを送っています。
TBS のドラマ、日曜劇場『本日も晴れ。異状なし』(毎週日曜日21 時〜)のロケが沖縄の名護と波照間島で行われているからです。
この作品は、日本の最南端の波照間島をモデルにした架空の島、那瑠美島が舞台。そこに住む全員が顔見知りで事件も起きない島に、坂口憲二さん演じる駐在さんがやってきます。おまわりさんよりもお医者さんを
必要としている島。しかし、当初は招かれざる存在だった彼の素直さと情熱によって、島や人々の気持ちにさまざまな変化が起こり、希望が生まれていく人間ドラマです。
私の役は、西門うららという島でたった一人の小学校教師。沖縄本島出身のうららは、子どもは好きだけど、閉鎖的でプライバシーのない島の暮らしにうんざりしています。さらに後ろ向きの姿勢の自分自身にもうん
ざりしています。ネガティヴな思考だから、島でも孤立しているうらら。そんな彼女の心が回を重ねるごとにどう変わっていくのか。楽しみに観ていただけたら嬉しいです。
ドラマのロケがスタートする直前は、2 月4 日リリースの3 枚目のCD『pf』のレコーディングを行っていました。今回私は初めて12 曲すべてを作曲し、ピアノ演奏をしています。自分でつむぎ出した音を、自分でかたちにする。最新アルバムは、音楽家としての今の私を集約した作品といえるかもしれません。実は、最近気づいたことがあります。女優と音楽家。この両方を並行してやることについて、私のスタンスが少し変わってきたのです。以前はドラマや映画と音楽は別のものととらえて、それぞれと向き合っていま
した。ところが、いつの頃からか、この2 つはそのどちらかが欠けるともう片方もうまくいかなくなる?対?として私の中で存在しています。
たとえば、女優として物語の中にいて見た風景や、揺れた感情によって、私の中に新しい音が生まれます。
この生身の私が本当に感じたものから生まれるからこそ、言葉がないピアノの演奏でも、リスナーの皆さんにストーリーや風景を感じていただけるのではないでしょうか。
私は映画のサウンドトラックが大好きです。最初に買ったサントラのCD は『黄昏』
でした。ニューイングランドの湖畔が舞台で、ヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーン演じる年老いた夫婦と娘との、ひと夏を描いた切ない物語です。
高校生のときにテレビで観て、ものすごく感動しました。そして、デイヴ・グルーシンがつくったあのサントラを聴くと、映画の中の風景が今でも私の中によみがえります。
最近じーんと感じたのは、『奇跡のシンフォニー』です。孤児院で育った少年がまだ見ぬ両親を求めて、ギターを手に大都会マンハッタンへ向かう物語。この映画の音楽からも、言葉のないインストゥルメンタルが、リスナーにたくさんの風景を観させてくれ、心の中にイメージを膨らませてくれることを感じました。物語と音楽、風景と音楽は、結びついて人の心に伝わるのです。
今回の沖縄ロケに、私はキーボードを一台持ち込みました。波照間島の海を見て、私の中に新しい音が生まれるかもしれないからです。出合った風景から、自分の中にまだ見ぬドラマが生まれ、そこからメロディが
生まれたらどんなに素敵でしょう。
女優をやるからこそ生まれる私だけの音楽がある。今、感じています。









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