

松下奈緒 Nao Matsushita 1985年生まれ。兵庫県川西市出身。3歳からクラシックピアノをはじめ音大進学を経て女優に。現在はピアニスト、歌手と幅広く活動。
幼い頃は手作りの服を着てました。祖母が洋裁の上手な人で、スカートからニットのセーターまで、何でも作ってくれていたのです。他の誰も着ていない、祖母手作りの私だけのお洋服。ちょっとだけ、誇らしい気分だったのを憶えています。
ファッション雑誌を読む年頃になっても、それは変わりませんでした。両親は「着たい服があったら自分で作りなさい」というタイプだったから、雑誌を読んで気に入った服があれば生地を買って、祖母に手伝って貰って自分で作っていました。「こんな服が着たいんだけど」と、自分でデザイン画を描いて、祖母に相談したこともよくありました。高校生くらいになると、古着屋さんに通うようになりました。当時は古着を重さで売るお店が出始めたばかりの頃で、山のように積み上げられた古着の山の中から、自分の好きな色や柄の服を探し出すのがとても楽しかったのです。サイズが合わなければ寸法を変えて作り直しました。
これはファッションとの向き合い方という意味で、とてもいい経験だったなあと思っています。高校生の頃はアルバイトもしていなかったし、毎月のお小遣いの範囲内でやりくりしなければいけなかったということもあるけれど、両親と祖母のおかげで、お洋服は並んでいる中から選ぶものではなく、自分で作るものという感覚が子供の頃から染みこんでいたからこそ、そういうことが出来たんだと思います。
ファッションが単純に自分を飾るためのものではなく、自分を表現するものだということを、私は自分の知らないうちに学んでいたのかもしれませんね。
自分を表現するという意味で言えば、女優という仕事をするようになって、もうひとつ別の発見もありました。映画やテレビのドラマで着るお洋服は、もちろんその役柄に合わせてプロのスタイリストさんが選んだもので、つまり自分の好みとはまったく違うものを着ることが多いですね。
たとえば、ワンピース。自分のスタイルではないと思い込み、ほとんど着たことがなかったんだけれど(自分で言うのも変ですが)、これがびっくりするくらい似合っていた。大袈裟に言えば、プロのスタイリストさんによって、今まで自分が知らなかった、もう1人の自分を発見したんです。この仕事をしていなかったら、もしかして一生ワンピースの似合う自分を知らなかったと思うとなんだか不思議な気持ちです。







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